BOOK DETAILS

フェルメールの絵画空間
図学から読み解く

佐藤 紀子 【著】
A5判/上製/256頁
定価:本体3,200円+税
ISBN978-4-902078-72-5
2022年3月刊行


フェルメールの描いた情景を、
私たちはどのように感じとっているのだろうか。
画家の信念と幾何学とを図学的な手法で結びつけ、
絵画の規範としての見えない秩序を
構図から読み解こうとする試論。


[目 次]
はじめに
第1章 絵画と透視図法
立ち現れる仮象空間
1 透視図法と構図
 1.1 透視画の種類
 1.2 透視図法 ――視点と画面
 1.3 陰影の透視図
2 視覚経験の可視化
 2.1 俯瞰的空間 ――チマブーエ
 2.2 経験的透視図法 ― ―ジョットの絵画空間
 2.3 透視図法の萌芽 ― ―ウゲートの絵画空間
3 仮想の建築
 3.1 アルベルティの透視図法
 3.2 ピエロ・デッラ・フランチェスカの透視図法
 3.3 理想の建築 ― ―ピエロ・デッラ・フランチェスカの絵画空間
4 優れた技法書
 4.1 「距離点」とは何か ― ―パノフスキーの解釈
 4.2 ブッカーの解釈
 4.3 床の境界線
 4.4 架空の距離点
 4.5 日常風景に紛れ込む異空間
5 絵画を分析する
 5.1 分析図の作成
 5.2 分析図をみる

第2章 フェルメールの絵画空間
日常をトリミングする
1 フェルメールの構図
 1.1 類型的な構図
 1.2 近景・中景・遠景 ― ―《モナ・リザ》と《絵画芸術》
 1.3 パラメデスの床
 1.4 光景を描く
2 近景に描く
 2.1 《マリアとマルタの家のキリスト》
 2.2 《ディアナとニンフたち》
 2.3 《取り持ち女》
 2.4 《眠る女》
3 奥行きを描く
 3.1 《窓辺で手紙を読む女》 
 3.2 《恋文》
 3.3 《ヴァージナルの前に座る女》 
 3.4 《信仰の寓意》
 3.5 《手紙を書く女と召使い》
 3.6 《絵画芸術》
4 距離の違いを描く
 4.1 《稽古の中断》と《士官と笑う娘》 
 4.2 《牛乳を注ぐ女》と《水差しを持つ女》 
 4.3 《真珠の首飾り》と《リュートを調弦する女》 
 4.4 《青衣の女》と《天秤を持つ女》
 4.5 《天文学者》と《地理学者》
5 タイルの床を描く
 5.1 《二人の紳士と女》と《紳士とワインを飲む女》
 5.2 《音楽の稽古》と《合奏》と《ヴァージナルの前に立つ女》

第3章 カメラ・オブスクラの役割
《絵画芸術》をめぐって
1 カメラ・オブスクラの存在
 1.1 スゥイレンスの研究
 1.2 ワドゥムの研究
 1.3 ステッドマンの研究
 1.4 レンズの性能
 1.5 室内を装飾する床
 1.6 室内を数量化するタイル
2 インスピレーションの源
 2.1 カメラ・オブスクラとピンホール
 2.2 カメラ・オブスクラの範囲
 2.3 《牛乳を注ぐ女》と描かれたモデルたち
 2.4 カメラ・オブスクラと画面構成
 2.5 視点の融合
3 調和と黄金比
 3.1 17世紀の黄金比
 3.2 黄金比と仮象空間の構築
 3.3 ユークリッドと透視図法

第4章 絵画の規範

共有の基盤

1 比例と平面幾何
 1.1 デ・ホーホの構図
 1.2 古典主義の影響
 1.3 建築と尺度
 1.4 中世の幾何学
2 《聖プラクセディス》の分析
 2.1 三つの《聖プラクセディス》
3 フェルメールの贋作
 3.1 建築家から画家、そして贋作者へ
 3.2 フェルメール作を描く
 3.3 本物と型

結び


佐藤紀子(さとう のりこ)

茨城県生まれ。1997年女子美術大学芸術学部絵画科日本画卒業。1999年東京藝術大学大学院美術研究科造形理論(図学)修士課程修了。2012年東京藝術大学大学院美術研究科美術専攻芸術学研究領域(美術教育)博士後期課程修了。博士(美術)。
東京工科大学メディア学部助教を経て、現在、女子美術大学特任助教、東京藝術大学非常勤講師。日本図学会、美術教育研究会、日本バーチャルリアリティ学会、JIAS日本国際美術家協会会員。
著書に『造形の図学』(新装改訂版、共著、日本出版サービス、2014)、『美術と教育のあいだ』(共著、東京藝術大学出版会、2011)『遠近法と絵画 ―描く人、鑑賞する人のための―』(共著、美術出版社、2003)などがある。美術家としては第53回欧美国際公募スペイン美術賞展(コミージャス、2021)、第21回日本・フランス現代美術世界展(六本木、2020)、第33回パリ国際サロン2020(パリ、2020)などに出品。




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