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Arts and Culture Library 3

宿命の画天使たち 山下清・沼祐一・他

三頭谷鷹史【著】
四六判並製 口絵カラー16頁、本文モノクロ298頁
本体1900円+税
ISBN978-4-902079-12-1
2008年6月1日刊行

山下清を国民的画家と呼んでもそれほど違和感はない。しかし、彼の絵画がどんな意味をもち、どのような位置にあるのか、美術の視点からは問題にされないまま放置されてきた。1950年代に巨大ブームが起き、山下絵画は大衆のなかを生きることになったのである。近年、もう一人の天才・沼祐一の存在が見えてきた。1930年代、二人が過ごした八幡学園での知的障害児たちへの革新的な教育が背景にあった。しかも、この学園で育った画天使は二人だけではなかった。
CONTENTS
はじめに
第一章 八幡学園の画天使たち
山下のことは山下に聞け/怒りと哀しみの味/山下清――八幡学園に入る/山下絵画の第一発見者――戸川行男/記憶画の夢幻的世界――石川謙二/文字遊びの不思議
第二章 一九三八年 特異児童の美術界デビュー
大隈講堂「特異児童作品展」/北川民次の「特異児童作品展」批評/『特異児童作品集』の出版/安井曾太郎の目
第三章 青樹社「特異児童作品展」の波紋
押し寄せた観客二万人/天才説と非天才説の対立/谷川徹三の山下非天才説/小林秀雄の山下絵画「空洞」説/誤解された川端康成の「空白」説/文学と非文学の架橋/「一つの美術」と「もう一つの美術」/柳宗悦の山下擁護論/付記 アウトサイダー・アート
第四章 久保寺保久と八幡学園
美術か人間的救済か/久保寺保久とその時代/学園の教育「踏むな、育てよ、水そそげ」/知的障害児たちの自治会
第五章 画天使たちの工房―― 山下清
美術の希薄が美術を生む/戦死を恐れた少年――山下清の実像/生命賛歌の初期作品/絵画芸術への脱皮
第六章 画天使たちの工房―― 沼祐一
四重苦を背負った少年/虐待の心的外傷と自己治療/オブジェ主義から絵画へ/可愛く、怖く、美しく/野生児 もう一つの成長の道/解釈を拒む聖なる絵画
第七章 画天使たちの工房―― 謙二、重博、繁、新作ほか
小さな文人――石川謙二の世界/その他の画天使たち――野田重博ほか
第八章 転職放浪とルンペン放浪
学園があきて放浪の旅へ/画家を自覚しない画家/盗まず争わず――山下の成長/戦争の破壊と死を見つめて/稚拙様式の完成
第九章 大衆のなかに消えた画家
山下清の捜索記事/特異児童から裸の大将へ/放浪時代の終焉/画家への目覚め/徳川夢声対談「問答有用」/最後の逃亡、十三時間/大衆のなかに消えて

おわりに
引用文献・関連文献
三頭谷鷹史(みずたに・たかし)
一九四七年愛知県生まれ。同志社大学文学部美学専攻卒業。一九七〇年代は美術、写真、演劇、パフォーマンスなどのジャンル横断的表現活動をおこなう。一九八〇年代以降は美術批評を中心に活動し、新聞、雑誌、展覧会図録等に批評文・研究論文を多数執筆。展覧会も多数企画。著書に『富山県立近代美術館問題・全記録』(共著、桂書房、二〇〇一)、『複眼的美術論前衛いけばなの時代』(美学出版、二〇〇三)など。現在、名古屋造形芸術大学短期大学部教授。美術評論家連盟会員。

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